日本語弁論大会の原稿(Scripts of International Speech Contest in Japanese)

先日お伝えした日本語弁論大会での3人がとてもすばらしかったので、発表内容をみなさんにも読んでいただきたいと思います。

高松キワニスクラブ会長賞受賞作。
テーマ『肉が怖い!!』

PHAN THITHANH NHAN(パン ティ タン ニャン)/ベトナム

私は去年の10月4日に日本へ来ました。同じ国の先輩たちもいたので、日本へ来たその日から、すぐ安心して生活を始めることができました。これからお世話になる大家さんにベトナムからのお土産として干し牛肉を渡しました。
「これはベトナムのお土産で、とてもおいしいですよ。どうぞ召し上がってください。」
私は、大家さんは当然喜んでくれるものと思っていたのですが、予想に反して大家さんの表情は少し不満そうでした。そして、「どうも、すみません、すみません!」と言いました。
私は「何か変な返事だなぁ。どうして、『ありがとう。』じゃなくて、『すみません。』なのだろう。大家さんは私に何か悪いことでもしたのかな。それとも、お肉はお土産としてふさわしくないものだったのかな。」と思いました。
そんなことが頭の中をよぎりましたが、とにかくそのお土産を食べてもらいました。すると、大家さんは大きい声で「すごい肉が怖い!でも味はおいしい!」と言いました。
 私はこのことばにショックを受けました。日本人は礼儀正しいし、相手の気持ちをよく考えて話すと思っていたのに、どうしてこんなひどい言葉を今日会ったばかりの私に言うのだろう?と思って、混乱してしまいました。「どうしてすみません、どうして怖い、それはどんな意味?」その後楽しく話しましたが、私の心の中は悲しさと不安な気持ちでいっぱいでした。

日本へ着て1ヶ月後、アルバイトを始めました。仕事を早く覚えたのに、周りの人たちからほめられることはなく、逆に叱られることが多かったのです。私には理由が分かりませんでした。
ある日、みんなが私に対する不満を言っているのを偶然耳にしてしまいました。「にゃんさんの耳はまだまだやわ。『これ片づけまい』と言っても全然分からんみたい。」
「え?」私には寝耳に水でした。そのことばは習ったこともあるし、ちゃんと聞き取れていたからです。「にゃんさん、これ片づけまい」と言われたら、私はちゃんと片づけないように気を付けていたのです。動詞プラス「まい」は「しない」という意味ですよね?「ダイエット中だから、絶対間食はするまい」の「まい」は「しない」という意味です。ちゃんと学校で習ったのを覚えています。「どうして言われたとおりしているのに、叱られて、悪口まで言われるの?」私にはわけがわかりませんでした。
その日以来、私は落ち込み、自信もどんどんなくなっていきました。自分の日本語能力は低く、日本での生活は大変だと思い、何度も国に帰りたくなりました。悩んだ末、私は学校の先生方に自分の悩みを話しました。すると先生方は「なるほど、なるほど。」と何回もうなずき、とても驚いたようすでした。そして、先生に説明してもらって、やっと原因が分かりました。そうです。答えは「讃岐弁!!!!」だったのです。このことは今も忘れられない瞬間です。

時間がたち、今、バイト中は讃岐弁にもだいぶ慣れてきました。今では「怖い」は「かたい」、「しまい」は「してください」という意味の方言だったことが分かりました。そして、面白い讃岐弁を勉強して、話せるようになるのが楽しみの一つになっています。暑い日には、「今日はがいに暑くて、えらい。」ご飯を食べた後は、「おなかがおきた。」帰るとき、「山本さんいぬな?」こんな讃岐弁も自然に口から出てきます。「にゃんさんは讃岐弁たくさん知ってて、すごいね。」と言われて、「いいえ、まだまだです。」と答える時が、うれしい瞬間です。他の人にお土産をあげるときは、「これ、つまらないものですが、どうぞ。」といい、お土産をもらうときは、「すみません、いただきます。」というのにも慣れました。日本人は謙遜の言葉をよく使いますから、意味もいろいろあることを知りました。「すみません」は謝っているのではなくて、「お世話をかけて恐縮です」という意味です。本当は「おいしいもの」なのに、「つまらないもの」と謙遜して言います。これらは「自分のことは謙遜して、他の人のことは尊敬する。」という相手への気遣いから生まれた日本独特の文化です。

「郷に入れば郷に従え」ということわざはベトナム、日本だけじゃなくて、どこにでもあると思います。たとえ短期間の留学でも、そこでの習慣を守ることは重要です。習慣とはその国が長年かけて育ててきた文化の一つです。自分の国ではないからといって、その国の習慣を無視することはできません。確かに何をするにしてもダメダメとばかりいわれるといやな気持ちになることもあるでしょう?しかし、その国の人への心配りを怠らないことが、生活を楽しいものに変える秘訣だと思います。本来習慣とはとても合理的なものなのです。それに慣れれば、外国にいることがむしろ楽しく感じられるに違いありません。
帰国するまであと半年ほどですが、私は若いうちにいろいろな国へ行って、新しいことを学びたい、習慣や言葉の深い意味を知りたい、そしてどんどん成長していきたいと思っています。
ご清聴ありがとうございました。


続いて...

テーマ『日本のあいさつ』

鄭 泰煕(ジョン テヒ)/韓国

皆さんこんにちは。
私が日本に来て一番びっくりしたのは、この日本のお辞儀です。
このような90度の深くて長いお辞儀を、私は今まで日本の極道映画の中でしか見たことがありませんでした。ですから、実際に日本に来て深々と頭を下げられたとき、まるで私がやくざの組長になったかのようで、気恥ずかしかったです。それと同時に、自分が偉くなった気がして得意気な気持ちにもなりました。
しかし、実際の私はやくざの組長でもマフィアのボスでもなく、普通の人間ですから、あいさつをされたら、当然こちらもあいさつを返さなければなりません。ここは日本なのだから、日本のやり方に合わせなければ、と思い、私もとっさに深いお辞儀で返しました。
私の国、韓国でもあいさつのとき、お辞儀をする習慣があります。日本と同様に深く頭を下げたら、礼儀正しいという印象があります。しかし、このような深いお辞儀は日本ほど頻繁には行いません。友達や家族はもちろん、初めて会った人や店の客に対しても軽く頭を下げる程度です。
私ははじめ、この習慣に全然慣れることができませんでした。一日一回と決まっているならそれほど苦にはならないのでしょうが、日本人は一日に何回もお辞儀をするのです。特に、初めて会ったときや、お願いをするとき、感謝の気持ちを表す時などは何度も繰り返しお辞儀をしています。一度お互いにお辞儀したのに一方がもう一度お辞儀をすると、すぐさまもう一方がお辞儀を返し、するとさらにもう一度…といった具合で延々と続きます。一体いつお辞儀を終わらせたらいいのか分からず困りました。
アルバイトを始めると、あいさつの回数は一気に何十倍にも増えました。お客さんが来ると、店の奥の方にいても、あいさつをしなければなりません。たとえそのあいさつがお客さんに聞こえなくてもしなければならないのです。アルバイトの間中ほとんどあいさつをしているといってもいいくらいでした。なぜ日本人はこんなにたくさんあいさつをするのでしょうか。正直、大きい声であいさつしたり、何度も深く頭を下げるのは、疲れるし、面倒くさいし、それに、めがねも落ちそうになります。お辞儀をたくさんした日には腰も痛くなります。日本で生活していく限り、この習慣になれなければならないのかと思うと、少し憂鬱でした。
しかし、日本に来て半年が経った今、私のあいさつに対するイメージは反転しました。アルバイトを始めたばかりのとき、慣れない仕事に一生懸命で、お客さんの様子をしっかり見るほどの余裕がなかったのですが、ようやく慣れてきて一人一人を見ることができるようになったとき、お客さんが私のあいさつに喜んでくれていることに気がつきました。その笑顔を見ると、私も嬉しい気持ちになり、アルバイトの疲れも少し軽くなったような気がしました。それまではただ礼儀だからと義務的にしていたのですが、それからは心を込めてあいさつをするように心がけました。そして、あいさつをするのがどんどん楽しくなっていきました。
私が客として利用しているお弁当屋さんでも、弁当を受け取って出るとき、誰もが元気に 「ありがとうございます、またお越しくださいませ」と異口同音に言ってくれるのですが、私がアルバイト先で心を込めてあいさつをするようになってから、このあいさつに潜む別の意味を考えるようになりました。「私たちが心を込めて作ったお弁当をぜひ楽しんで食べてください。」きっとこのような意味だと思います。今ではこのようなあいさつをされるたびに、その中に隠された意味を考えるのが私の密かな趣味になっています。
母国にいた時はあいさつの重要性についてあまり考えたことがありませんでした。あいさつはただの礼儀に関するもので、その人がどのくらい礼儀正しいのかを測る上での尺度でしかないと考えていましたが、日本で実際に生のあいさつを経験してみると、それはそんな単純な尺度ではなく、他の人に思いやりの心を伝える手段だったと気付きました。本当に簡単な一言、たった一言のあいさつがお互いの心に小さな喜びを作っているのです。西洋文化流入し、着物を脱いだ日本で今も続くあいさつの文化。私は日本の方々にぜひこのすばらしい習慣を守っていってほしいと思っています。
ご清聴ありがとうございます。

最後に...

『異文化に対する驚きと母国への想い』

KHANAL SANJIB RAJ(カナル サンジーブ ラズ)/ネパール

みなさん、ネパールという国をご存知ですか? 私は3月25日にネパールから日本へきました。
日本へ来てからの5か月、たくさんおどろく事がありました。今日はそのことについて、お話ししたいと思います。
日本のぶんかやしゅうかんなどはネパールとちがうところがいくつかあり、私をおどろかせました。まず1つ目は、お金です。
日本ではたくさんのお金をかせぐことができますが、いっしゅんでお金がなくなってしまいます。ネパールの1か月のきゅうりょうは2〜3万円くらいしかありません。だからぶっかも安いです。はんたいに 日本はきゅうりょうが多いのでとてもぶっかが高いです。
私は日本にきたつぎの日にさっそく下着を買いに行きました。そこで私は自分の目をうたがいました。なんと、下着1まい1000円とかいてあったんです! ネパールでは1000円もあれば10まいほども買えます。そのとき、私は ちょっと ネパールに帰りたい気持ちになりました。こんなに物価が高いのかと・・・・。
その日は、食べものも買いにいったのですが、そこで私はまた自分の目をうたがいました。なんと1個のリンゴが100円と書いてあったからです。ネパールではふつう、家にリンゴうりがやってきて「1キロ90ルピー!!1キロ90ルピー!!」といえの前でさけびます。でも、ネパールの女せいはリンゴ売りに「60ルピーなら買う」と、かならず ねぎります。日本では100円だしても たった1こ しか買えません。そして、ねぎれません。
ほかの食べものも とても 高かったです。マンゴーは1000円、スイカは2000円、ほうれんそうは200円。すべての食べものの ねだんが高く、とてもおどろきました。あじはおなじなのに、、、と思いました。
これは、私が日本に来て一ばん おどろいたことです。             2つ目は、人がとてもきれいなことです。ネパールでは50才くらいになった女せいは おてらなどに行って しんだとき てんごくへ 行けるようにとおいのりをします。
でも、日本の50さいの女せいは まだみんなはたらいています。かおも20才の女せいと同じくらいきれいにかんじます。みんなどれだけ うつくしいんだろう。日本の女せいは とし をとらないんだろうか?と思いました。
あとで日本人の女性に聞いてみましたが、日本人女性はすう万円かけて けしょうひんを買い、そして毎朝1時間ほどかけてけしょうをするそうです。だからきれいに見えるようです。きれいなおくさんを毎日見られる日本の男せいはラッキーですね。
3つ目は、車です。
日本へ来たときみちをはしっている車を見てとてもおどろきました。なぜかというと、日本では車にドライバーの人しかのっていない車がたくさんはしっていたからです。
ネパールでは1だいの車に3〜4人くらいのっています。1人だけで車にのることなどありません。いなかへ行くとジープに11人、車の上に6人くらいのっている事もあります。
すわるばしょがない時はひざの上にすわったり、トランクにもすわります。
ネパールはみちがよくないからおしりがいたくなります。
みんな「おしりがいたい!!もっとゆっくり行って!」といいます。
日本はみちが きれいですから おしりが いたくなることはありません。
トランクにすわることもありません。車の上にすわることもありません。
でも、車の上はとても おもしろいし、けしきもよく見えるので ときどき なつかしくなります。
みなさん、ネパールに行ったら ぜったいに 車の上にのってみてください。
とても きもちいい ですよ。

私はあと2年香川で勉強するよていです。
たぶんいまからの2年はもっとおどろく事がたくさんあると思います。また学べることもたくさんあると思います。
今日みなさんに話たようにネパールは日本のより道もよくありませんし、日本ほどお金もありません。
ほとんどの人がお金がなく、自分や家族が生きていくだけで精一杯です。
道をきれいに作ったりするような技術もありません。
でもネパールはとてもきれいな国です。ネパール人はみんな家族を大切にしたり、国を思う気持ちを強く持っています。 これは私の国の誇りです。
私はネパールが文化や今ある自然を大切にしながら発展し、世界中の人が来たいと思うような国になってほしいと望んでいます。
みなさんはどうですか? 自分の国がどうあってほしいですか。
そのために何をしようと思っていますか?私は将来得意なパソコンを使って旅行会社を作りたいです。
そしてその仕事をとおして日本とネパールの人たちがお互いの文化を知ったり学んだりできるような機会を作り、両国のかけ橋になることが私の夢です。
そのために言葉だけではなく、日本のおもてなしの心や文化、習慣をたくさん学び身につけたいと思います。
そしてネパールの発展のために努力していきます。

ご清聴ありがとうございました。 ナマステ。


みなさん、いかがでしたか?
留学生の日本語と観察力、素晴らしいと思いませんか!